車への"夢"

百余年のクルマの歴史をひもとくと、クルマに一生を捧げた人たちのドラマティックでロマンティックな物語を無数に拾いあげることができます。


そして、そんな人たちが生み出したクルマが人々の手に渡って、再び無数のドラマを演じるのです。


巨大なプレス・マシンが轟々と喰りながら鉄板を整形し、立ち上がったカマキリのようなロボットが腕を振り回し火花を散らしてボディを溶接し、最終組み立てラインでは多くの人たちが黙々と同じ作業をくり返す・・・。


電気系の配線は絡まった蜘蛛の巣よりも複雑に見えます。


クルマの生産工程には、ロマンティックな香りなど欠片ほども感じるところはありません。


ひたすら無機質で冷ややかなイメージばかりが飛び込んでくるのに、アッセンブリー・ラインを離れ、エンジンに火が入れられると同時に、クルマはまったく別ものに変わります。


豊かな表情を見せ、ロマンティックな香りを漂わせながら語りかけ、わたしたちの心を捕らえて放さなくしてしまうのです。


これは中古車となった後も同じこと。


そして、この人の心を揺り動かすというところにこそ、クルマが単なる耐久消費財に留まらず独特の世界を創ってきた最大の理由があると思って間違いはありません。


・・・そしてここは、これからもクルマが多くの人たちにとって特別なものであり続けるためには、もっとも留意しなければならない点のひとつです。


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